あまいぞ!男吾第一話「あまいぞ!男吾」

 
 僕が小学生のときのコロコロはまさに宝石箱でして、ドラえもんを初めとした藤子漫画、おぼっちゃまくんダッシュ四駆郎、ラジコンボーイ、かっとばせキヨハラくんなど子供をリードし続ける絶対的バイブルとして君臨しておりました。
 子供向けホビーとしてちょっと前後してしまいますが、ビックリマンミニ四駆に強かったため、SDガンダム覚醒前のボンボンにかなり差をつけていた記憶があります。そんな中で割と異彩を放つといいますかギャグでもホビーでもない子供達の人間ドラマを描くこの「あまいぞ!男吾」は子供心にひと味違った印象を持たせるに十分なもの。時代は巡り何と凄い分厚さで復刻され、買って読んでみましたが、これまた面白い。当時を覚えて居る人も、お子さんがいる方も読む価値ありますぜ。ということで第一話あらすじ。
 「ただ今帰りましたぁーー!」巴男吾の帰宅は、いつも大騒動、空手家の父、柔道家の母、剣道の達人の姉の挨拶代わりの攻撃を交わし部屋までたどり着く日常。姉の攻撃を食らいつつも、喧嘩好きの男吾は今日の喧嘩を振り返るのだった。
 そんな男吾の隣の家に大きな新居が。次の日遅刻をしてしまい、先生にキツイお仕置きを食らう男吾だったが、その目に転入生の奥田姫子が目にとまる。奥田財閥の令嬢である姫子はガサツな男吾とは一見真逆。しかし男吾を執拗に挑発し、怒った男吾は腕相撲対決を受けることに!
 姫子の愛嬌たっぷりのウインクに気を取られ、負けてしまう男吾。その事は家族にも知れ渡り、きつ〜い特訓を強いられる事に。心に隙があるから負けるんだと叱咤され思うところもある男吾。果たし状を書き翌日姫子につきつけるのであった・・・。
 男吾と姫子は喧嘩を思うさま繰り広げ、姫子も泥だらけになって殴り合い投げ合い、そして姫子はついに泣き出してしまう・・・その涙は喧嘩の痛みではなく、令嬢の肩書きを気にすることなく自分をぶつけてくる男吾との真剣なやりとりに感じる喜びの涙であった。かくして二人は奇妙な友情、関係で結ばれ共に帰宅する。しかし男吾は女の子を泣かすとは何事だ!と家族に怒られるのだった
「わーっ、いったいどうすりゃいいんだよー!」
 
 ということで、何分昔の漫画なもんであらすじ多めにしてみました。キーワードは「家族、学校、友達」この三つの共同体のあり方ですね。男吾の家族はいつも全力でコミュニケーションを取っており、絶えることのない本音のやり取りが続いています。一方お姫の家は姫子は家でもうわべの疎外感を感じている。学校でも同様に男吾は学校でも賑わいの中にいて、教師のウマとも殴られつつも楽しくやってる感じ。お姫はここでもどこか違った形でふれられていることに。
 ここで男吾がこの壁を取り払い姫子を男吾側の共同体に引き寄せるわけで、それはお姫が最も欲しかった本音と賑わいの世界の扉が開いた瞬間である喧嘩で涙を流してしまうというのもある意味当たり前のことではあるんですね。
 男吾がお姫をグーパンチで殴ったりかなり本気の喧嘩で、それは現代的な価値観からは少し外れていますが、それが凄く重要な事、本気のコミュニケーション、相手を軽んじる侮蔑の暴力ではなく尊敬からくるぶつかり合いこそが美徳であるという提示は中々子供漫画とはいえやりにくいことだと思います。学校の雰囲気も学級崩壊ではなく教師と生徒がワイワイやりあっているという絶妙のバランス感覚。このユートピア世界こそがこの漫画の魅力ということなんでしょうねえ。
 それにしても記憶よりお姫はわりと乱暴な女の子で結構読み直してビックリしました。うーん面白い。