天元突破グレンラガン 第11話「シモン、手をどけて」

 今でも語りぐさなアレすぎる四話や、そこから波及したガイナックス取締役の失言などから無用に評判を落としてしまっていたグレンラガンですが、今週は1〜3話に匹敵する素晴らしいエピソードとなりました。
 ラガンはゴミ捨て場に集められ、仲間からももう見放されそうな状態。シモンと言えば、岩を掘ってアニキの像を量産する火の鳥鳳凰編に迷いこんでしまったではと思わんばかりの墜ちっぷり。そこに現れたニアがシモンの行動は別におかしなことはない、形にしたら私にも見ることが出来るとシモンを励まします。
 一方大グレン団に罠丸出しの美女村からの救難メッセージが、しかしつくづくキタンはリーダーシップに欠けるとというか決断はするものの、その決断を尊重させるだけの物を全然見せれていないためにストレスが溜まる展開、カミナとの違いをまざまざと視聴者は見せつけられているという感じです。大グレン団は罠にかなり、全員捕らえられてしまいます。
 ニアと四天王が一人グアームとの会談。螺旋王にとってニアはペットと同様に愛玩動物に過ぎず、子供も産ませては飽きたら箱に詰めて捨てているとのこと、自己主張する人形など必要ないとのことでニアも捨てられたと告げられます、ニアが可哀想すぎるぜ・・・。グアームは螺旋王に捧げる娘達を集めた村の長として治め、自分が寵愛してやるとの申し出を出しますが、ニアは当然拒否。娘達をも人形扱いするグアームに激昂しビンタを咬ましますが、凄い威力でグアームが吹っ飛ぶ辺りが笑えます。
 Aパートはここで終了。立ち上がるシモンとニアのアイキャッチがカッコイイですな。
 Bパートは牢獄から脱出を試みる面々、しかし壁に使われている岩は硬く、突破はとても無理な様相。回りが諦めムードの中、ただひたすらにコアドリルで穴を掘り続けるシモンの姿に、大グレン団の面々は目を奪われます。その姿を見てヨーコは在りし日のカミナとのやり取りを思い出します。
 村から出ようとしたときも、本当はこれで正しいのか自信などなく、焦りもあった、回りにハッパをかけつつも、自分はどうすることも出来なかったと。そしてシモンが自分を信じ、黙々と穴を掘り、ついには堀り抜けたことで自分はその黙々と自分を貫いた背中に負けない男になると誓ったと語ります。
 カミナはシモンの背中を信じ、シモンはカミナの意志を信じてお互いを心底から支え合っていた兄弟であったわけですね。思えばカミナは「俺のピンチを助けてくれるのは何時もお前だ」「お前のそういうところが、俺を救ってくれるんだ」などとシモンに対する絶対的な信頼の言葉を向けていました。人に信頼されるということはそれだけでも大きな力になるということですね。そして最後にシモンがカミナの最後の言葉を思い出す。
「いいかシモン忘れんなぁ?俺が信じるお前でも無い、お前が信じる俺でもない、お前が信じる・・・」「「お前を信じろ!」」
 ついにシモンはアニキが言った自分を信じる事を知り、その感情の高まりに呼応したラガンがやってくるというもの凄い燃えるシーン。大グレン内に突撃し、シモンを信じるニアを解放。ここで涙ながらにシモンに抱きつくニアが無茶苦茶可愛い。そしてそのままの勢いで上空へ退避。
 この上空でのやり取りの浮遊感と音楽がかなり良い。背景の美しさと揺れる髪、風の音など空に対する憧憬の念が煽られますな。ここのニアも異常なまでに可愛い、登場以後のニアのプッシュぶりは凄いですな、しかもそれが確実に実ってますぜ。「シモン、手をどけて」とそっとラガンのレバーを握ります、それは二人一緒に戦おうという意思表示。
 地上ではグアームの駆るゲンバーによりロシウのグレンが虫の息。そこに「ロシウ、合体だ!」と猛烈な勢いで降ってくるラガン。ここからが最高。こ・・・これが噂のグレンラガンか!とそこでハッチが開いてシモンがガンバスター立ちで口上を述べます。
「アニキは死んだ、もういない!だけど、俺の背中に!この胸に!一つになって生き続ける!」
「穴を掘るなら天を突く、墓穴掘っても堀り抜けて、突き抜けたなら、俺の勝ち!」
「俺を誰だと思っている。俺はシモン、カミナのアニキじゃない!俺は俺だ!穴掘りシモンだ!」
このシーンのカッコよさでここ二話で溜まったフラストレーションが一気に吐き出される心地よさよ。大グレンのメンバーもついにあるべきリーダーが戻ってきたかのような羨望の眼差しでシモンを見つめます。カミナが今際の際に放ったギガドリルブレイクでゲンバーを一蹴。撤退に追い込んだのでした。
 最後に捨てられた何代もの姫を陽の当たる場所に埋葬。何という数だ、ここってさらっと流してますけどブラックなシーンだなあ。ニアにプロポーズさながらに石を渡し、ニアはニアらしく生きたら良いと告げるシモン。キタンよりリーダーの座を譲られ、都へと一直線に進むのでした。
 しかし、ニアの猛烈な存在感と可愛さに比べ、初期を支えたヨーコはカミナがいなくなってから宙ぶらりんになってしまったと言いますか、存在感が減衰しすぎで泣ける。