たどり着くべきその彼方まで、世界を貫く矢のように-----「忘却の旋律」

いあー今「忘却の旋律」のサウンドトラックを聞いているんですが、心底素晴らしい一枚だと思いますわ。この忘却の旋律は2004年にTBS系で放映されていたアニメでして、監督はあずまんが大王で有名な錦織博でした。その手腕は十分に発揮され、突飛な世界観の中に息づく主人公=ボッカ・セレナーデの決意に満ちた戦いが小気味よく描かれている傑作です。最初は牛バスやらミッドナイトひよこなどネタ的な注目が集まりましたが、その中でもエゴに満ちた人間たちと高潔なメロスの戦士との対立はこのアニメの大きなテーマとして後につながっていきます。一度ピークを迎えたのが14話で、迷宮から撤退するときに小夜子に鎖に導かれて道を見つけるのですが、その時にかかる「A Water Butterfly」という曲がすこぶる良い曲で凄く気分を盛り上げてくれました。その後猿人湾編や宇宙編に話が進みます。このアニメが僕の心に深く刻まれているのはあの最終回があるからです。ソロとボッカの問答、そして最後の決戦。果たして忘却の旋律は、もうソロを守る力は失ってしまっていました。
ソロの「ああ・・・思い出せない・・、ほら、辛いときさ、いつも君が歌ってくれた、あの歌・・・」という台詞に象徴されるようにモンスターであるソロの悲哀がズバッと一言で表されています。この言葉は無茶苦茶印象に残っています。
そして最後に生きる戦いを投げ出さないボッカ、そしてこのアニメは要はこれが言いたいというナレーションで物語は幕を閉じます。僕は個人的に能登さんの演技には特筆するものはないかなと思ってましたが。
「走れ。その厳しさを知りながら、なお本当の自由を求めるものよ。お前が辿り着くべきその彼方まで、世界を貫く、矢のように」
このナレーションは凄く心を打たれました。優しげな声色の能登さんから決意に満ちた力強い言葉が錦織監督や脚本家の伝えたかったことがすっきりと伝わってきました。エピローグにかかる「Memories Of February Leaves」はこの場面のみの曲です。まさにエピローグという曲で、僕はこの曲を死ぬほど繰り返し聞きました。このアニメに満ちている決意というのは「スクライド」に近いものがあります。貫かれる信念と戦い、それはとても美しいものですね。